○大玉村ふるさと水循環保全条例
平成29年3月16日
条例第3号
水は、あらゆる生物にとって命の源であり、人々が社会生活を営む上で欠くことのできない資源である。
しかし、近年、産業構造の変化や多様な生活環境を求める宅地化の進展に伴い、森林の保水能力の低下や河川水量の減少等が見られており、健全な水循環とその生態系を含めた保全が不可欠になっている。
このような中で、自然の生態系に悪影響を与える負荷行為を抑制し、健全な水循環の保全と安達太良の恵みの再認識が本村の持続可能な社会形成には重要な要素になる。
よって、この安達太良の恵まれた水環境を後世に引き継ぎ、現在及び将来の村民が豊かな水の恩恵を享受し、快適な社会生活を営むことができるよう、ここに大玉村ふるさと水循環保全条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、水循環基本法(平成26年法律第16号)第5条の規定に基づき地方公共団体の責務として、健全な水循環の保全について、基本理念を定め、事業者及び村民の責務を明らかにするとともに、健全な水循環の保全に関する施策の基本的な事項を定めることにより、施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の村民の安全かつ健康で快適な生活の確保に寄与することを目的とする。
(1) 自然の水循環 自然界において、降水が土壌等に保持され、若しくは地表水及び地下水として流下して海域等へ流入し、又は大気中に蒸発して再び降水になる一連の過程をいう。
(2) 健全な水循環 水の浄化機能その他の自然の水循環の有する機能が十分に発揮され、人間の社会生活の営みと水環境その他の自然環境の保全との適切な均衡が確保されている状態をいう。
(3) 水循環への負荷 人間の社会生活の営みにより自然の水循環に加えられる影響であって、健全な水循環の支障の原因となるおそれがあるものをいう。
(4) 水環境 自然の水循環における水質、水量、水生生物、水辺地等、水に関する環境の総体をいう。
(基本理念)
第3条 健全な水循環の保全は、水が人間の生命その他自然の生態系の維持に欠くことができないものであり、かつ、人間の社会生活の営みに不可欠な代替性のない資源であることを踏まえ、現在及び将来の村民が、良好な飲料水その他の用水を確保でき、その他自然の水循環のもたらす恵みを持続的に享受できるよう適切に行われなければならない。
2 健全な水循環の保全は、水循環への負荷の少ない快適な社会生活及び持続的発展が可能な地域を構築することを旨として、全ての者の公平な役割分担の下に、自主的かつ積極的に行われなければならない。
(村の責務)
第4条 村は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、健全な水循環の保全に関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
2 村は、健全な水循環の保全に関する施策を推進するに当たっては、近隣自治体等との連携に努めるとともに、事業者又はこれらの者の組織する民間団体の参加と協力を求めるよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う水循環への負荷の低減その他健全な水循環の保全に自ら努めるとともに、村が実施する健全な水循環の保全に関する施策に協力するものとする。
(村民の責務)
第6条 村民は、基本理念にのっとり、その日常生活に伴う水循環への負荷の低減に自ら努めるものとする。
(水循環保全基本計画)
第7条 村長は、健全な水循環の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画(以下「水循環保全基本計画」という。)を定めるものとする。
2 水循環保全基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 健全な水循環の保全に関する総合的かつ長期的な目標及び施策の大綱
(2) 健全な水循環の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 村長は、水循環保全基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、村民の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるとともに、近隣自治体その他関係行政機関等の意見を聴くものとする。
4 村長は、水循環保全基本計画を定めるにあたっては、大玉村環境基本条例(平成29年条例第2号)第17条に定める大玉村環境審議会に諮問するものとする。
5 村長は、水循環保全基本計画を定めたときは、これを公表しなければならない。
6 前3項の規定は、水循環保全基本計画を変更する場合に準用する。
(流域における基本的な施策)
第8条 村は、流域全体を総合的に捉え、効率的かつ持続的な水利用の推進と水循環への負荷の低減を図るため、次に掲げる事項を基本的な内容として、流域における健全な水循環の保全に関する施策を講ずるものとする。
(1) 水道水源として重要な地域の水環境を保全すること。
(2) 森林の維持管理を適切に行い、保水能力、浸透能力等森林がもつ多面的機能を活かして、地下水を涵養するとともに、強雨時における河川への水及び土砂の流出を抑制すること。
(3) 汚染を防止するとともに、水質浄化の機能を高め、清流を維持すること。
(4) 自然の水循環における水を有効に活用した農業水利体系の構築を図ること。
(5) 水田、ため池及び用排水路等農業施設の有する地下水涵養機能を十分に活用すること等により、安定した地下水位を維持すること。
(6) 農業用水の効率的利用、生活用水及び工業用水の水使用の合理化、雨水及び生活排水処理水の再利用等により水需要を抑制し、河川における水源としての負担を軽減すること。
(7) 流域における雨水の浸透面を保全し、又は雨水の浸透能力を高めることにより地下水位を上昇させ、もって湧水及び地下水から河川へ流入する水量の割合を増加させること。
(8) 河川の構造面での対策等により河川の生態系を蘇生し、豊富な生物が生息できる潤いのある水環境を保全し、及び創出すること。
(開発行為の届出等)
第9条 大玉村内(大玉村内にその土地の一部が在する場合を含む)において次に掲げる行為(以下「開発行為」という。)をしようとする者は、当該開発行為に着手する日の60日前までに、規則で定めるところにより、開発行為の種類、場所、水環境に与える影響予測評価、着手予定日その他規則で定める事項及び添付書類を村長に届出なければならない。
(1) 都市計画法の規定に基づく開発行為
(2) 大玉村開発事業指導要綱第2条に規定する開発事業
(3) 大玉村ふるさと景観保護条例第6条に規定する行為
(4) 森林法第10条の8に規定する伐採及び伐採後の造林の届出
2 次に掲げる行為については、前項の規定は、適用しない。
(1) 非常災害のために必要な応急措置として行う行為
(2) 地下水等の採取の無い行為
(開発行為に係る指導等)
第10条 村長は、前条の開発行為に関する届出等をした者に対して、良好な水環境の保全を図るために必要と認めるときは、住民説明会の開催、その他必要な措置をとるべきことを求めることができる。
2 前項の規定による要求は、開発行為届出等があった日から起算して30日以内にしなければならない。
3 村長は、第1項の規定による要求を受けた者が当該要求に従わない場合において、良好な水環境の保全を図る上で著しい支障があると認めるときは、書面により、当該要求に従うよう勧告することができる。
4 村長は、前項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ、その者に口頭で意見を述べ、又は意見書を提出する機会を与えなければならない。
5 村長は、第3項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、その旨及び当該勧告の内容を公表することができる。
(無届開発行為者に係る措置)
第11条 村長は、開発行為届出等が無く開発行為に着手した者(以下「無届開発行為者」という。)に対し、当該開発行為の種類、概要等その他必要な事項について報告を求めることができる。
2 村長は、前項の報告等により無届開発行為者に係る開発行為が、良好な水環境の保全を図る上で著しい支障を及ぼすと認めるときは、当該無届開発行為者に対し、書面により、良好な水環境の保全を図るために必要な措置を講ずるよう勧告することができる。
2 前項に規定する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
(理解を深め活動を促進するための措置)
第13条 村は、関係行政機関や関係団体等と協力して、健全な水循環の保全に関し、教育及び学習の普及啓発等の充実を図ることにより、村民及び事業者がその理解を深めるとともに、これらの者の健全な水循環の保全に関する活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
(調査研究)
第14条 村は、自然の水循環や健全な水循環その他水環境の保全に必要な調査研究を行うものとする。
(近隣自治体に対する協力)
第15条 村は、近隣自治体等が健全な水循環の保全に関する施策を策定し、及び実施しようとするときは、情報の提供、その他必要な協力を行うものとする。
(国等への要請)
第16条 村は、健全な水循環の保全を総合的かつ計画的に推進するため必要があると認めるときは、国等に対し必要な協力を要請するものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。