【優秀賞】「無知」って本当は? 大玉中学校3年 浅和里菜

「無知」って本当は?
大玉中学校3年 浅和里菜
 
 少し目を閉じて考えてほしい。もし、自分が外を歩いているとき、前方から来た、手をつないだ二人の女性とすれ違った。この時のあなたはどのような反応をするだろうか。同じように、あなたがある男の人とすれ違った。その男の人はスカートをはいていた。あなたは、どんなことを思うだろうか。もしかしたら、「何!?あの人?」「男なのにスカートはいている…何で?」「女どうしで、手をつなぐとかありえない」と思うかもしれない。私もきっとそう思う。でも、これからの世の中はきっと変わっていく。
 陰でコソコソ。相手を見ながらコソコソ。すれ違ったときにコソコソ。SNSでツイート。自分が知らないうちに、相手のことを傷つけているかもしれない。
 最近、世界中でLGBTQが話題になっている。今年、東京で開かれたオリンピック・パラリンピックに重量上げの選手で男性から女性に性転換したロバート選手が出場し、話題となった。中でも、批判の声は大きかった。重量上げのライバル達は、「不公平だ」などと言っていた。確かに男性だった人が女性の競技に参加するのは、力の差があるかもしれない。しかし、「多様性」をテーマとしたオリンピック・パラリンピックなのだから、様々な人がいて良いと思う。世界中の人がお互いのことを理解し、讃え合う場でもあると私は思う。ロバート選手が、東京オリンピックに出場することについて、どう思っていたかは分からない。だけど私は、不安でしかたなかったと思う。「どんな目で見られるのだろう。世界の人達は理解して、他の選手達と同じように応援してくれるだろうか。」と、大会が近づくにつれて、不安が風船のように膨れあがっていったに違いない。なぜなら、多くの批判があるからだ。まだ、世界にLGBTQについての理解が広まっていないし、知らない人だって多い。SNSでツイートしたり、陰でコソコソ悪口を言ったりするのは、相手のことをよく知らないからだ。
 「無知」は恥ずかしいことだと思う。「無知」がいじめにつながったり、相手を傷つけたりするときがある。
 私も「無知」で相手を傷つけたことがある。それは、私はある時、嫌な事があって、気持ちが沈んでいた。その時、友達が「大丈夫?何かあった。」と声を掛けてくれた。しかし私は、「別に。何もない。」と当たるような感じで言ってしまったことがある。その後、友達は「そっか。何かあったら言ってね。」と優しく声を掛けてくれた。私は言ってからとてもモヤモヤした。なぜなら、友達は、私の事を思って声を掛けてくれたのに、私はその子の気持ちを何も知らないで、自分の感情をぶつけてしまったからだ。相手の誕生日や性格などを知ったからといって、相手の全てを知ったわけではない。相手がどのよう気持ちで、どんなことを考えているかを知る、理解することが、相手を知る一歩だと私は思う。
 もう一度、目を閉じて考えてほしい。私のように「無知」で相手を傷つけてしまったことはないだろうか。多分、ほとんどの人は、「無知」という言葉を『知識がなく、ものごとをよく知らない』という意味で使っていると思う。確かに「無知」という言葉の意味として辞書にも載っているが、それだけではないと思う。前にも述べたように、相手の気持ちなどを知らない、知ろうとしないことも「無知」だと思う。
 例えば、たくさんの知識をもっていて、物知りなAさんがいたとする。おそらく多くの人はこのような人のことは無知とは言わない。でもAさんは、他の人に自分の思ったことをズバズバと口にし、相手を傷つける。また、相手の気持ちを考えずに自分の感情をぶつける。私は、このような人のことを「無知」というのだと思う。たくさんの知識があって、勉強ができても、人のことを考えられなければ知識は無駄である。だから私は、学問の知識だけでなく、人としての道徳心を養っていきたい。
 LGBTQについて批判するのは、よく知らないからだ。もっと多くの人が興味を持ち、LGBTQについて知る必要があると思う。これからの世の中は、LGBTQが当たり前になると思う。だから、差別や偏見の目で見るのではなく、相手のことを理解しよう、知ろう、という気持ちが大切だ。
 「無知」は恥ずかしいことだ、と述べたが恥ずかしいことではないのかもしれない。「無知」は、誰にでもある「心」がないことだ。一人一人が持っている温かい「心」が、たくさんの人に広がってほしい。そうすれば、勝手な偏見や、いじめがなくなると思う。一人でも「無知」な人が減ってほしい。そして、「無知」の意味についても改めて考え直してほしい。誰一人、嫌な思いをせず、暮らしやすい世界になってほしい。
 
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