【優秀賞】 高齢者が住みやすい社会にするために 大玉中学校3年 渡邉穂乃花
高齢者が住みやすい社会にするために
大玉中学校3年 渡邉穂乃花
高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違える等し、運転していた車が暴走し大きな事故になったニュースをテレビで最近見た。高齢ドライバーの事故について調べてみると、死亡事故に至るような重大事故に関しては、七十歳未満のドライバーより七十五歳以上のドライバーの方が約二・五倍多く発生しているというデータがあった。その原因として加齢による視力や体力の低下から運転操作が不適格になること、反射神経が鈍くなり咄嗟の判断が出来ない事等が考えられている。また、認知症等の病気によって的確な運転が徐々に出来なくなる事も原因の一つになっているという。事故を起こしてしまった加害者やその家族は、起こした罪と後悔を一生背負っていくことになるのだろう。一瞬にして自分だけでなく、多くの人々の人生を壊してしまうのはあまりにも怖く、悲しい事だと思った。
私には曽祖夫がいる。家の庭や少し離れた所にある畑で作物を作ったりしながら祖母と祖父と共に過ごしている。小さい頃から、私が曽祖父の家に行くと、曽祖父は外で何か作業をしていて、私の顔を見るなり「おー、来たかぁ」と笑顔で声を掛けてくれる。いつも何かしており明るいイメージの曽祖父だ。少し前に大玉村の広報に「長者番付」が記載されていた。その番付を何気なく見ていると、曽祖父の名前があったのだ。驚いて父に聞いて見ると、
「そうだよ。じいちゃんもう九十過ぎているんだよ。」
と教えてくれた。私にとってそれは大きな衝撃だった。いつも元気で明るい曽祖父が九十を過ぎているなんて考えた事もなかったからだ。その時、ふとニュースで流れた高齢者の事故を思い出した。曽祖父が軽トラックを運転している姿をよく見ていたからだ。何となく心の隅に“おじいちゃんは大丈夫かな”という思いがよぎった。母にそっと自分の思いを伝えてみると、母も心配していると話してくれた。しかし、もし曽祖父が運転をやめてしまったら、曽祖父は自由に畑に行く事や買い物にすら行く事が出来ないと教えてくれた。今まで当たり前にしていた事が出来なくなる、それがどれだけ辛いかは私でも簡単に想像する事が出来る。
それからしばらくして、ふと曽祖父の軽トラックが無い事に気付いた。父に聞くと、
「免許を返納したんだ」と教えてくれた。曽祖父は家族に勧められ免許を返納したのだという。免許返納をしたと聞いて安心した反面曽祖父の生活が成り立つのか心配になった。大玉村はバスや電車も通っていない。買い物や家の近くの山に行くのでも車が必要だ。交通手段が無くなった曽祖父は楽しみや生きがいが減ってしまうのではと思った。そんなことを考えていたある日、シニアカーに乗って庭をぐるぐる回っている曽祖父がいた。とても嬉しそうだった。免許がいらないシニアカーを使えば近くの行きたい所に行く事が出来る。家から離れた畑へ行く時も安心だ。免許を返納したが、シニアカーを買った事で曽祖父はまた曽祖父らしく暮らせるようになったと感じた。しかし同時に私はある疑問が浮かんだ。シニアカーを買うことだけが高齢者がよりよく生活できる解決策か?と。もちろんシニアカーを買えたのは良かった。けれども、中には様々な理由でシニアカーを買えなかったり、病気等で操縦出来なかったりする人もいるだろう。高齢者が外出する事が出来ないと、家にこもりがちになる。趣味や楽しみ、生きがい、人との関わりが失われてしまう。私達は誰でも自分らしく生きる権利がある。その為にどうすべきなのか。そこで私が考えた事の一つは地域の力だ。地域で循環型のバスを作ったり、免許返納した人には交通機関で使える割引券を配布したりすれば気軽に出かける事が出来るのではないか。調べてみると大玉村でもデマンドタクシーの利用券を交付している事を知った。しかし、これは事前登録が必要だ。行ける施設も限られている。もっと利用できる場所が増え、一人一人の希望に沿った場所へ行く事が出来れば良いのにと思った。夏休みに墓参りに行く途中、曽祖父の山で作業をしている曽祖父を見つけた。家族みんなで近くの自動販売機で飲み物を買い、曽祖父へ届けた。私達を見つけた曽祖父はニコニコしながら「おう」と返事した。そこには、買ったばかりなのに使い込まれているかのような、シニアカーが置かれていた。そのシニアカーを見て、嬉しくなると共に、これからも曽祖父の好きな事を、生きがいを続けてほしいと思った。そしてこの社会が沢山の高齢者にとってもっと住みやすい世界にするためには私達若い世代が考え、知恵を出し合い社会を作っていく必要があるのだと強く思った。その為に出来る事を考え、行動できる人になりたい。
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大玉村TEL:0243-48-3131FAX:0243-48-3137
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