【佳作】戦争飢餓から考える、食糧への権利 大玉中学校3年 遠藤愛呼

戦争飢餓から考える、食糧への権利
大玉中学校3年 遠藤愛呼

何気なく見ていたニュースで、一枚の親子の写真が、私の目にとまりました。不安げな表情で子供を抱きかかえる母親、抱かれている子供は青白く、骨と皮だけにやせ細り、背骨が浮き出た、かわいそうな姿なのです。この写真は、今なお続いているイスラエル・ガザ戦争で撮られたものでした。ガザ地区では、戦争により飢餓が進行しているそうです。そこで大きな問題となっているのが、戦争飢餓なのです。戦争飢餓とは、戦争によって引き起こされる食糧不足や栄養失調、それに伴う飢餓のことを意味します。この言葉を知り、毎日食べられることが当たり前ではない国があり、今も飢餓によって死んでいく人がいるという現実を突きつけられました。私は、戦争飢餓は、決してあってはならない事実だと考えます。人間の生きる権利を確実に奪う恐ろしい侵害なのです。私は、飢餓で死んでゆく人たちを減らす一歩を見つけたいと思い、戦争飢餓から考える、「生きるために食べるという権利」について考えてみようと思いました。

現在、ガザでは意図的に食糧と水が断たれるという、人為的な集団飢餓が起こされています。飢えさせて、死に至らしめるという紛争の武器としての行為なのです。一日に一食でさえ、食事できるか分からない日々。支援物資である、米、豆、パスタなど、栄養とはかけ離れた食糧。それさえも、生活を維持していくために高額で転売され、お金を持たない市民には十分に行き渡らない現実があります。また、配給用のトラックや物資の配給拠点で、わずかな食糧を求める人々に対して、発砲や爆撃を行い、日常的に虐殺がくりかえされているというのです。手に入るかどうかも分からない食糧を命がけで待ち、飢えに苦しみながら生きる生活を思うと、とても胸が痛みます。

今年日本は、終戦から八十年をむかえました。戦時中から戦後にかけての飢餓はもちろん、その後もたびたび日本でも、「食べるという権利」が侵害されてきたことを学びました。戦後の日本の飢餓を学ぶなかで、私が衝撃を受けたのは、欠食児童と呼ばれる子供たちの存在です。戦後の食糧難の時代には、学校に弁当を持参できず、食生活に問題を抱える子供たちがいました。その後、日本の経済が安定し、給食制度が普及すると欠食児童と言われるこどもたちは減少したそうです。でも広い意味で考えれば、現在も欠食児童と同じような境遇の人たちがいます。経済的に困窮していて、まともに食事ができない子供、働くことができず、低収入の高齢者、そして戦争によって飢餓の状況にある人々、現在も世界中に「食べるという権利」を奪われた人が、数多く存在しているのです。

私は「食べるという権利」というものを調べてみました。そこで、食糧安全保障のなかに「食糧への権利」というものを見つけました。その権利には四つの大切なことがあり、一つ目は、食糧があること、二つ目は、食糧に経済的・物理的にアクセスできること、三つ目は、食糧の量や質が適切であること、四つ目は、持続可能であることだそうです。この四つが満たされてはじめて、権利を実現できると知りました。
世界では「SDGs」の取り組みが盛んになっています。そこには「飢餓をゼロに」を目指す活動もあります。また、別の視点でフードロスの目標も掲げています。現在の日本では、年間約四百七十二万トンの食品ロスが発生しています。この間、家族でスーパーに行ったとき、賞味期限のせまった未開封の商品を回収する箱が設置してあるのを見つけました。中には、食品がたくさん入っていました。それは、フードバンクと連携して、経済的に困難な家庭に配布したり、施設へ供給したりするのだそうです。以前、体験で、弟と「子ども食堂」に行ったことがあります。子ども食堂とは、子供たちが無料、または低価格で食事できる場所のことです。農家の方から譲り受けた食材で調理したものを、たくさんの子供たちと一緒に食べました。とても美味しかったし、楽しかったことを記憶しています。その時もフードバンクの食料が使われていたのかもしれないし、子ども食堂によって食糧への権利が守られた子供たちがいたのではないかと思いました。

私は、戦争飢餓も含め、飢えで苦しむ人がいなくなる世界にしたいと強く思います。私自身がフードロスをこころがけることはもちろんですが、私ができる食糧への権利の第一歩は、世界の戦争と飢餓の歴史、現在世界で起きている問題に目を向け、理解することです。戦争飢餓を知る事で、日本にも、生活に困窮し、食料品を必要としている人がいることを改めて知りました。私は、これからも飢餓で苦しむ人々の命を守る活動について学びを深め、ひとりでも多くの方に知ってもらう努力をしていこうと思いました。
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