【最優秀賞】「じいちゃんは一年生」 玉井小学校4年 武田 栞奈
じいちゃんは一年生
玉井小学校四年 武田 栞奈
ある日、じいちゃんは笑って言いました。「今年は、米作り一年生だ。」
毎年、一緒においしいお米を作っていたおじさんが亡くなって、今年はじいちゃんだけの米作りとなったのです。おじさんはじいちゃんにお兄さんです。米作りの経験と知しきをたくさんもっていたおじさんがいない米作りは不安だったと思いますが、それを笑い飛ばすじいちゃん。私たち家族もいっしょにがんばることにしました。
四月。米作りのスタートです。まず、こやしをふって代かきです。じいちゃんは、こやしの分量を考えたり、均等にふったりするのが、むずかしいと言っていました。
五月はいよいよ田植えです。朝早く育苗センターに行って、苗を運んで来ました。その後、家族みんなで朝ご飯を食べて、田植えが始まりました。田植え機に乗って苗を植えるじいちゃん。田んぼの周りで苗を機械に積んだり曲がって植えないように指示を出したりするお父さん。苗に水をかけたり、空箱を洗ったりするのは、私とお母さんと弟。空がこの下は根っこがからまっていて、洗うのが大変でした。根っこを取るのに苦戦するし、上下に動かして洗うには力がいりました。おばあちゃんが用意したくれた飲み物やこじ飯でエネルギーをほきゅうして、みんな一人一人、力を出し合った田植えでした。
田植え後も、じいちゃんは、おじさんが残してくれた農業日記とにらめっこしながら、水の管理が続きました。八月に稲穂が出ると、じいちゃんはほっとした様子で田んぼをながめていました。
十月、まちにまった稲刈りです。黄金色の稲は、あっという間に刈り取られました。一週間後、放射能検査が終わり、お米がとどけられました。その夜、その新米をたいて、おじさんの仏だんにお供えしました。そして、家族みんなでご飯を食べながら、一年間をふり返りました。真っ白くかがやいて、もっちりとしたご飯は、とてもあまくておいしかったです。おいしいお米は、みんなを笑顔にしました。それを見たじいちゃんの得意顔。
「来年も、みんなでがんばろうな。」
じいちゃんは、うれしそうに言いました。じいちゃんは来年二年生。私たちももっともっとお手伝いします。そう、来年もじいちゃんの喜ぶ顔を見たいから。