【佳作】言葉の可能性 大玉中学校2年 小沼駿斗
言葉の可能性
大玉中学校2年 小沼駿斗
「早く気付いてやれなくてごめんなさい。」これは、ある出来事があったときに僕の祖父が言った言葉だ。僕はこの一言からたくさんのことを考えさせられた。
ある日、祖父の近所の方が亡くなった。その亡くなった方は一人暮らしだった。家族の方はなかなか連絡がとれず、祖父に家を見に行ってくれないかと連絡があった。だが、もうすでに遅かった。そして祖父はご家族の方にこんな言葉をかけた。
「早く気付いてやれなくてごめんな。」この言葉を聞いたとき、今自分がどれだけ幸せな環境にいるのかに気付かされた。今の時代、人と会うことにたくさんの制限がある。「人権」とはなんなのか。これを調べると、「人権が人間らしく生きる権利で生まれながらに持つ権利」と書いてある。つまり、僕たちには人と会う権利がる。それが制限されてしまうこの世の中は僕は嫌だ。こんな状況が三年以上も続いている。これからまた何年もこの状況が続けば、僕たちはどうなってしまうのか。人と話すこと、コミュニケーションをとることから離れる。そうなってしまったら社会に出たとき、今回の祖父の立場になったとき、こんな言葉がかけられるだろうか。だからこそコロナウイルスがいち早く終息することを願っているし、信じている。
僕はある日、こんなテレビ番組を見た。ある女性に取材すると、その女性はこう言った。「私の料理すごいまずいんだよね。」この女性は一人暮らし。番組のスタッフは家について行く事にした。そして、みそ汁をつくってもらった。特にまずくなるような事はしていないみそ汁を、スタッフと二人で食べた。それは美味しかった。女性は泣きながらこう言った。「みんなで食べたらこんな美味しくなるんだ。」僕は一人でご飯を食べることは無い。だからこのように思ったことはない。けれど、これを見て、家族や祖父、祖母との食事、時間を改めて大切にしようと思った。「一人」や、「孤独」というものは、料理の味さえも変えてしまう。今の時代、戦争で罪のない人間が殺されたり、いじめられて自ら命を絶つ人がいたりする。さらに、コロナウイルスで入院する人や、亡くなってしまう人がいる。残された人がどれだけ悲しいか、どれだけ悔しいか、戦争やいじめだって、コロナだって一人ひとりの意識次第で無くすことができる。だから一人のために多くの人が、多くの人のために一人ひとりが行動する必要があると思う。
祖父に「早く気付いてやれなくてごめんな」といわれたご家族、スタッフに「美味しい」と言われた女性はいったいどんな気持ちになっただろう。少しだけでも気持ちが救われたと僕は思う。コロナ禍により、人と関わるコミュニケーションをとる回数が減ってきている。今までは、気軽に外を出歩き、買い物をすればお話をするのがあたり前だった。しかし、今は、気軽に外には出られず、話かけられない雰囲気がただよう世の中になってしまった。マスクで表情も隠れている。人とコミュニケーションをとるという事は思いやる力がつくと僕は思う。だから祖父はあの言葉をかけられたのだと思った。言葉は良くも悪くも相手の気持ちを変える。相手の気持ちを重くするのも言葉。相手の気持ちを軽くする言葉選びが重要になる。その言葉選びを上達させる道具がコミュニケーション。僕は学校に行けば友達がいて、コミュニケーションがとれる環境にいる。これは幸せなことだ。積極的にコミュニケーションをとり、相手を思いやり、思いやった言葉を選べる能力を高めていきたい。
今回の件はとても悲しい事だったし、起こってほしくない事だった。しかし、この件や、祖父の言葉からたくさんの事を考えさせられた。僕たちが今、どれだけ幸せな環境にいるのかということや、言葉には無限の可能性があるということだ。思いやりとはなんなのか、あの場所であの言葉をかけたことが正解だったのかは分からない。でも少なからず、相手の立場に立って考え、今出る最善の言葉を考えることも思いやりだと思う。これがこの件を通して僕が出した答えだ。悲しい出来事ではあったが、少し成長できた気がする。僕はこれからたくさん笑ったり、泣いたり、話したりしながら多くの人と関わり、相手を思いやっていきたい。だってこれは、人間が生まれながらにして持った権利なのだから。
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