【特選】偏見を持つ前に想像を 大玉中学校3年 菊地彩菜

偏見を持つ前に想像を
大玉中学校3年 菊地 彩菜
 私は、二年生の冬休み、大玉村海外交流事業「友好の翼」に参加しました。もともと、自分自身旅行が大好きで、小学校の頃から家族で旅行に出かけたり、キャンプに参加したりしていました。今までは、国内しか行ったことがなかったため、海外に行くことのできるチャンスを逃すまいと思い、友好の翼で台湾に行くことを小学校からすでに決めていました。募集が終わり、台湾への出発に向けて着々と準備を進める中、私は初めての海外に心躍るような気持ちでした。しかし、いざ旅行の数日前になると、台湾へ行くのが楽しみな反面、自分がメディアなどで目にしたり、耳にしたりしたことがある台湾への悪い印象を思い浮かべ、不安な気持ちも募ってきました。
 台湾へ行かない友達に、「だって台湾は、日本より空気が汚いでしょ。治安も良くないし。」こう言われました。この言葉に私は、少なからず影響を受け、さらに不安が募っていきました。異なる二つの気持ちが入り混じる中、その日がとうとう訪れました。飛行機で二時間ほどの移動ののち、台湾に着いた私は驚きました。街の風景も生活様式も日本とあまり変わらず、私にとって特に不自由はありませんでした。また、台湾の中学生に対して、「あまり積極的ではないかもしれない。」「私たちのことを迷惑な存在と思っているかもしれない。」などと自分の勝手な偏見を持ってしまっていましたが、それとは全く違っていて、どの人も優しく、積極的で楽しい人ばかりでした。
 私は、自分が見聞きしたことだけで、台湾やそこに住む人に対して、勝手に偏見を持ってしまっていました。つい二日前まで、台湾にひどい偏見を持っていた自分を後悔し、反省すべきだと思いました。
 このことから私は、自分勝手に物事に対して偏見を持ち、自分で自分の世界を狭くしているのではないかと思ったのです。自分の小さな知識だけで、物事を知ろうとせず、行動に移すことは、無責任な行動につながりかねないし、社会問題につながっていきます。
 例えば、今、世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。最近、ニュースなどでよく耳にするのは、新型コロナウイルスに感染した人が、周りの人から差別を受け、会社に出勤できないことがあるそうです。さらに、ニュースなどで、「マスク警察」「自粛警察」「帰省警察」という言葉を知りました。それらは、マスクを着用していない、外出自粛していない、東京からお盆で帰省した人々を批判し、差別をしている人のことを言うそうです。
 あるとき、ニュースを見ていると、中学生の男の子のインタビューが流れていました。その男の子は過敏症でマスクがつけられず、周りから差別的な目で見られることがあると話していました。過敏症であることを周りの人に分かってもらうための缶バッチなどで意思表示をするものの、周りの目はまだ気になると話していたことが印象深かったことを覚えています。もしも自分が過敏症で、マスクをつけたくてもつけることができない男の子と同じ立場だったら、周りが気になり、なかなか外へ外出できなくなり、心が傷ついていくと思います。また、もし私が、理由があってマスクをつけることができないと知らない人達の一人だとすれば、私も「あの人何?マスクしないの?」と少し不快に思うと思います。
 そこでの意思表示の缶バッチは大切なものであるはずなのに、理解できなかったり、納得できなかったりするのは人間の性のようなものだと私は思います。しかし、思考を広げ相手のことを知ろうと思うことが理解を得ることのできる最善の方法だと考えます。「あの人マスクつけていないな」ここで終わらず、「何か理由があるのかな」と考えを巡らすことが大切で、実行することで、このような差別、偏見が減っていくのではないかと思いました。
 世界中には、自分の全てと同じ人など存在しません。国にも人にも、それぞれのルールや考えを持っている人がたくさんいます。だから、差別・偏見が生まれてしまうのは、ある意味当たり前だと思います。しかしそこで、想像力を働かせ、他の人を理解しようとする心を持つことで、差別・偏見に対しての考えが変わります。これからの生活では、差別や偏見を考える前に、一度物事を大きく捉え、考えてから行動することが大切だと思います。一人一人の行動が、社会問題の解決につながるので、自分でよく考えて行動し、周りもそうなっていくように広めたいです。