【特選】命は大切だから

大玉中学校2年 春日 心愛
 
 夏休みに入る前、私の中学校で「命」の大切さを学ぶ教室が行われた。講師となった方は、二〇〇〇年十二月に東京都世田谷区で起きた殺人事件で妹一家を失ったご遺族の方だった。講話の内容は、大切な人を失った人と接する際はその人の悲しみに共感し、話に耳を傾けること、世の中を支え合う社会にしていくために様々なことを理解していかなければならないという内容だった。この話を聞いて「この人はなぜ、これほどにも前向きなのだろう」と思った。みなさんは、自分の大切な家族が突然いなくなってしまったらどう思うだろうか。私なら、立ち直れないほどの悲しみに襲われると思う。しかし、そのご遺族の方は溢れ出す悲しみがありながらも、大切な人を失ったという立場で私たち中学生に「命」の尊さについて教えて下さった。この講話を通じて、改めて「命」の大切さ・素晴らしさを学ぶことができ、これからも自分の命は自分で守っていこうと心から思った。
 このように、「命」の大切さについて深く考えていた時にある事件が頭の中を過ぎった。みなさんは覚えているだろうか。昨年七月、神奈川県で起きた障害者施設の襲撃事件を。元施設職員の男が刃物で十九人を刺殺、二十六人に重軽傷を負わせた戦後最悪と呼ばれる事件だ。この事件を新聞やニュースで初めて目にしたときは恐怖しかなかった。十九人という数は戦後最大の数だそうだ。もし、犯人が私たちが住んでいる地域に来たら・・・。もし、犯人が私たちの中学校に来たら・・・。もし、犯人が私の家に来たら・・・。そのようなことが実際になくても当時の私はこのようなことしか考えていなかったのだと、今の私は思った。事件から一年経った今は「命」について考えるようになった。亡くなった十九人の方はどのようなことを思っていたのか、そのご遺族の方はどのような気持ちだったのか、また、犯人はなぜこのようなことをしたのか・・・。考えることはたくさんある。その中でも、「人権」とは何なのかを改めて知るべきだと思った。辞書で調べてみると「人間が人間として生来持っている生命、自由、平等などを保障される権利」だと分かった。これは世界共通だ。なのに、なぜ人の命を奪う行為をするのだろうか。この事件後、全国の知的障害者の家族を対象にしたアンケートでは回答した三0四家族の六十八%が「事件後、障害者を取り巻く環境悪化を感じた経験がある」と答えたそうだ。私は人権の意味を知った上で思ったことがある。「生きる価値は障害者も健常者も変わらないことを社会は理解すべきだ」と。障害を持っているから命を奪うなんて理由は大間違いだ。世界には障害を持っている人がたくさんいる。だからこそ、様々な人々を理解しようという気持ちが大切だと思った。
 中学二年生になって「命」の大切さを学ぶ教室が行われ、本当に命は尊いものだと思った。それに加え、人権の本当の意味を改めて知ることができた。それでも、やはり世界には「人権」という誰でも持つことのできる権利を無視する出来事がたくさん起こるのが現状にある。
 先日、新聞を読んでいたときあるニュースが目にとまった。八月十七日スペインのバルセロナで車が歩道に突っ込み、観光客らを次々と殺傷したという記事だった。初めは、運転手の居眠りが原因の事故かと思った。しかし、本当の原因はイスラム国が犯行声明を出したテロだったという。少なくとも十三人が死亡、約百人が負傷したことが明らかになった。「またテロか」。私は記事を読んでそう思った。世界でも人権を無視する事件がたくさん起きているのに、その中のたった一つの事件を見て「またか。」と思う自分がいたのは自分自身、驚きと悲しみがあった。たった一つといっても十三人もの人が亡くなっているのだ。だからこそ、これからは日本だけでなく、世界の様々なニュース、特に「人権」に関わるニュースに目を向けて「命」の大切さについて、「人権」についてきちんと考えていこうと思う。
 今回、「命」について考えた時、命は本当に尊いということを改めて感じることができた。人権を問う事件がなくなってほしいと思っていても、簡単になくなるわけではない。でも、そのような世界を築くためには誰かが動かなければいけないのは確かだ。学校の先生も、「より良い学校にしていくためには誰かにやってもらうのではなく、自分たちでやっていくという気持ちが大切なんです」とお話されていた。だから、私たち中学生でもできることを考えて実行していきたい。例えば、友の声に耳を傾け、励ましを送るなど、自分にできることはたくさんある。そうすれば、少しではあるが事件・事故が防げる社会になっていくのではないだろうか。どんなにささいなことでも、私たちにはやる権利がある。一人一人の命を守るためにも、権利を持って自分にできることを進めていきたい。命は大切だから。
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