【優秀賞】お年寄りから学ぶこと  

福島県立本宮高等学校2年 根本 夏稀
 
 今年の夏、私は夏ボランティアという企画に参加した。きっかけは、担任の先生の話を聞いた時だった。お年寄りの方とふれあえる、良い機会だと思ったのだ。何度かボランティアは参加したことがあるが、直接施設を訪れるのは初めてだった。私は期待と不安が入り交じる複雑な気持ちで、二日間のボランティアに参加した。
 一日目、自己紹介から始まった。施設のスタッフの方に教えていただいた通り、大きな声でゆっくり話すことを心がけて、自己紹介をした。しかし、利用者のお年寄りの中には聞こえない方がいて、「お姉ちゃん、聞こえないよ。」と言われてしまった。スタッフの方には、「気にしないでね。」と言われた。私は、一番肝心な最初を失敗してしまったと思ったと同時に、一気に不安になった。それからは、お昼まで塗り絵の時間だった。どうすればいいか分からない私に、男性が声をかけてくれた。男性は、車椅子だった。塗り絵の準備の仕方、椅子の場所を教えてくれた。また、その方は私の緊張をほぐすために、自分の話をたくさん聞かせてくれた。出身地や家族のこと、利用している施設のこと。まだ小さいお孫さんの話を聞いた頃には、私は、すっかり夢中になっていた。いつの間にか、緊張も不安も消えていた。
 その後、私と友人は女性グループの担当になった。そのグループには、朝注意された女性もいた。また少し緊張が戻ってきたが、友人がその女性と話を始めたので、私は向かいの女性と話をした。塗り絵をしながら話をしていたら、好きなように塗ってほしいと言われた。私は描くことが好きだったので、そう言われてとても嬉しかった。塗っている間、女性はある話を聞かせてくれた。その話をしたきっかけが、遊んでいる少年少女の服を塗っていたときだった。「私が学生の頃は、こんなに楽しく遊べることなんてなかったのよ。」
私は、動かしていた色鉛筆を思わず止めてしまった。顔を上げると微笑んでいたが、瞳は真っ直ぐ私を見つめていた。女性が学生の頃は、戦争の真っ最中だった。父は職を辞め、生まれ育った家を捨て家族全員で疎開した。疎開先に着いても食べ物が少なく、苦しいなんてものではなかったそうだ。「今は何もかも十分にあるから、あなたは幸せな時代に生まれたのね。」そう言われると、なんと言葉を返したら良いのか分からなくなった。ただ一つ分かったことは、食事や睡眠など当たり前のこと一つ一つがありがたいということだ。
 二日目は、ちょうど夏祭りの日でほとんどがその準備だった。準備をするため、デイサービスの部屋から出て施設の奥へ行った。入居者のスペース、お風呂などを見てまわった。私の曾祖父が入居していたことがあり、懐かしく思えた。途中、スタッフの方が立ち止まり、「ここは、認知症の人達の部屋になります。」と、私たちに言った。認知症という言葉は、今ではほとんどの世代に広まっている。認知症と聞くと、私は良いイメージがない。物忘れするし、普通に会話もできない。正直、面倒くさいと思ってしまう。そういう人を世話する人達は、よく面倒くさがらないなと思ったこともある。でも、この部屋にいるスタッフの方たちは、笑顔で接していた。病気の重さにかかわらず接している姿を見て、偏見を持つ自分が馬鹿だと思った。
 私は二日間のボランティアを通し、経験よりも大切なことを学ぶことができた。ネットでは分からない、体験者だからこそ知れる戦争の残酷さ。人と会話する、楽しさ。偏見とは、恥ずかしいこと。その全てがこのボランティアで、再度学ぶことができた。今の若い人々は、身のまわりにある物や習慣などが当たり前だと思っている。だが、ボランティア企画を増やせば、考え方も変わるのではないかと私は、考える。
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