【優秀賞】言葉のこわさ 大玉中学校2年 渡邊未来翔

言葉のこわさ
大玉中学校2年 渡邊 未来翔
 
 僕は今身長約百七十センチ。体重六十キロだ。しかし僕は、幼稚園から太りだし小学校五年まで肥満体型だった。
 僕は、小学二年生から野球のスポーツ少年団に入った。僕は体が大きかったため、最初に二つ上の人に体重を聞かれた。僕は体重を聞かれたことがとても嫌だった。体重を聞かれた日泣きながら、母に訴えた事を今でも覚えている。母は、
「それはくやしかったね。」と共感してくれた。スポーツ少年団で温泉に行った際、いつも温泉に入りたくなかった。なぜかというと、太った体を見られたくなかったからだ。
 また、小学三年生の頃、体育の授業で逆上がりをした。体育の授業は担任の先生ではなく、体育専門の先生が教えてくれていた。その授業のなかでは、逆上がりができた人から、終わってよかった。しかし僕はまったくできなかった。逆上がりが出来ない友達と並んで、何度も繰り返し挑戦していた。何回やってもできなかった。そんな僕達を見て、体育の先生は
「そんな、おっさんみたいな腹してっからできないんだ。」
と言われた。僕は逆上がりができない悔しさと、その言葉にとても心が傷ついた。言われた言葉を誰にも教えたくなくて、一週間ぐらいずっと、誰にも言えなかった事を覚えている。
 しかし、明らかに僕の態度はおかしかったようで、何度も母に
「何かあったの」
と聞かれた。ずっと黙っていたかったが、何度か聞かれるうちに、なぜか全部話してしまった。話しているうちに悲しさと悔しさで、いっぱいになった。その話を聞いて、夜になっていたが、母と一緒に校庭まで行って雨の中逆上がりの練習をした。
 また、母は自分の料理のせいで肥満体型になってしまったのかと思い、栄養指導などを積極的に受けてくれていた。僕は、やせたくて食事の量を減らそうとしたこともあった。しかし、
「今は成長する大切な時期だから、しっかり食べなさい。」
と、母に言われた。また、保健の先生からも今は
『体重はそのままを維持していくことが大事』
と、言われたことを教えてくれた。僕は、母に言われるまま朝・昼・夜とおやつのおにぎりをしっかり食べ生活した。6年生頃になると、身長が伸びはじめ体重は変わりなく維持することができ肥満を解消することができた。
 この経験から、言葉は思ってもいないほど相手を傷つけてしまうことを知った。僕は、話を聞いてくれたり、いつもの様子と違うことに気付いてくれたりする家族がいたからその苦しみを乗り越えることができた。その心の傷を治すにはすり傷や骨折などと違って相当な時間を要する事が身をもって感じる事ができた。
 しかし、なかには言葉による心の傷を誰にも言えず苦しみ続け、心の病気になり摂食障害に陥ってしまったり自分に自信をもてず引きこもってしまったりしてしまう人もいるのではないかと思われる。僕はその苦しみが、痛いほどわかる。今では、こうしてみんなの前で話せるようになったが、僕の他にも身体的侮辱を言葉で受け心を痛めている人は大勢いると思う。
 僕ももしかしたら、思ってもいない言葉で誰かを傷つけているのではないかと感じることもある。あの先輩も、体育の先生もきっと僕が傷つくとは思わず、何げなく口にしてしまった言葉なのではないかと感じる。あの時、
「そんなこと聞かないで。」「そんなこと言わないで。」と、なぜ言えなかったのか、それは僕にも自分の表現力が足りなかったから、嫌だという思いを相手に伝える勇気が足りなかったからと今なら反省できる。ただ当時の僕には、それを言える心の成長ができていなかった。
 この経験で僕は傷ついたことは確かだが、この経験がなかったら、人の心の痛みに気づかなかった。とても貴重な体験ができたと今では感じている。
 もしかしたら今、僕の周りに僕と同じように、誰かの言葉に傷ついて悩んでいる人がいるかもしれない。そんな人達が、安心して心を開き自分の悩みを話せるようにそっと寄り添ってちょっとでも気が落ち着くように話を聞いてあげて、自分の経験をもとに適切な言葉をかけてあげられる人間になりたい。