【優秀賞】一人一人にできること 大玉中学校3年 伊藤 佳乃

一人一人にできること
大玉中学校3年 伊藤 佳乃
 
 皆さんは、相手に何かを伝える時、何を使いますか?大抵の場合は言葉や文字を使いますよね。それらは私達の身の回りに常にあり、様々なことを教えてくれます。ここで一度、考えてみてください。耳に入ってくる言葉、目で見た文字は、果たして良いことだけなのでしょうか?
 テレビで耳にする悲惨な事件、動画サイトでの心ないコメント、SNSでの誹謗中傷、相手の気持ちを考えないまま発せられる陰口や悪口・・・・・・。どれも心が痛くなるものばかりです。自分が同じことをされたら嫌なはずなのに、なぜそんなことをするのでしょうか。それは、もし自分が同じ目にあったら・・・・・・、と考えていないからだと思います。また、相手の気持ちを考えていれば、こんなことはしないと思います。自分が何気なく発した言葉で、誰かが傷ついてしまうことがあります。他人が発した言葉で、自分に向けられたものではなくても、心が深く傷ついてしまうこともあります。
 私がネットで、好きなアーティストについて調べていた時のことです。入力候補に好きなアーティストの名前と、その後に「嫌い」という文字が表示されていました。私は、驚きと好奇心から、その記事を見てみることにしました。個人のブログで書かれたもので、内容は偏見によるものばかりでした。それどころか、メンバーの容姿に対することまで書かれていました。私は、その文章を読み進めていけばいくほど、怒りと悲しみがこみ上げてきました。好きなものならともかく、なぜ嫌いなものをわざわざブログにのせるのでしょうか。ブログにのせるということは、多くの人が見るということであり、軽い気持ちでのせた言葉にも喜ぶ人がいたり、悲しむ人がいたりするということです。ネット上にあげてしまった言葉は、完全に消すことはほぼ不可能です。だからこそ、自分がのせた文章に責任を持つべきだと思います。
 言葉によって傷つけること、傷つけられることは、ネット上だけではありません。普段の生活でも、ふとした時に出た言葉で相手を傷つけてしまったり、自分が傷ついてしまったりすることもあります。場合によっては、たったの一文字でも相手を傷つけてしまうことがあります。例えば、同じ「えっ。」でも、自分が思っていることと相手が捉えたことが違えば、相手を傷つけてしまうことがあるかもしれません。相手が自分に特技を見せたとして、自分は凄さに驚き「えっ。」と言い、その後に「こんなすごいことできるんだ。」と言おうとしたとします。ですが、相手に一番に聞こえた「えっ。」だけだと、そんなことしかできないの?と捉えられてしまうかもしれません。このように、同じ一文字でも、自分と相手の思うことが違ければ、相手を傷つけてしまったり、誤解を招いてしまったりすることがあります。
 でも、言葉は時に相手を救うこともあります。誰かに悩み事を相談したとき、「私もだよ。」と言われたら「悩んでいるのは私だけじゃないんだ。」と思うし、「大丈夫だよ。」と言われたら「あまり気にしなくて良いんだ。」と思い、心が救われます。普段よく耳にする「ありがとう」や「ごめんね」の一言だけでも、心が救われる人はいると思います。言葉を書いて表した文字でも、誰かを救うことができます。
 言葉や文字というものはとても不思議なもので、誰かを傷つけたり、誰かを救ったりすることができます。SNSで一度あげてしまったら、その文字を消すことはほぼ不可能なように、何気ない一言でも、誰かの脳に記憶されてしまったら、記憶を消すには長い時間がかかります。そのため、私は常に「言葉選び」には気を付けています。何を言ったら相手を傷つけずに済むか、どのように言ったら分かりやすく伝わるかを考えて言葉にしています。口にした「言葉」は目に見えませんが、誰かの記憶には残り続けます。目に見えないものだからこそ、大切にしなければいけないと思います。言葉だけでなく、文字も同じです。SNSを例としてあげると、一度あげたら、その文字はずっとネット上にあり、消すことはできません。自分があげようとしているその一言で傷ついてしまう人がいないかどうか、一度あげたら一生消せないこと、それをよく考えてからあげるべきだと思います。知らないうちに誰かを傷つけないために、一人一人が相手のことを考えるべきだと思います。そして、言葉や文字が誰かを傷つけてしまうのではなく、誰かを助けてあげられるような、そんな世界に変わっていってほしいです。私一人では無力ですが、一人一人の力が合わされば、きっと良い方向に変わっていけると思います。