【特選】 未来へ

高校生一般部門 野内 智子
 毎年、終戦記念日特集で戦争のドキュメンタリーや映画等を目にする事がある。この時代の人々は、自分の気持ちすら素直に口にする事もできず、権利の強い者に従うしかなかった。現代の人達がまったく同じ状況にさらされたら、おそらく一日もその場に居る事はできないだろう。
 去年、家族旅行で沖縄に行く機会があり、ひめゆりの塔へ足を運んでみた。生き残った方の体験談の中で女学生達が軍に振り回され、解放命令が出た後は、生きて虜囚の辱めを受けずと自決する道を選び、海への身投げをみんなで決めたり、泳げる者は死ねないかもしれないと毒を飲んだりし、自ら命を絶っていった事。それが美徳とされていた事が書かれていた。生きていたくても、生きる事すら許されなかった命の重さを言葉では言い表せない位の重さで感じた。テレビでは放送する事ができない様な生々しい経験を書き綴ったもの、家族に当てた手紙があり、これが自分だったら・・・これが我が子からの手紙だったら・・・と、とても胸が苦しくなり、しばらく頭から離れる事ができなかった。旅行で楽しんでいる事すら申し訳ない気持ちになってしまった。それと同時に現代に生まれ育っている事にありがたさを感じた。今の私達があたりまえの様に過ごしている日常は先人達からの贈り物だと思う。『人間が人間らしく生きる為に生まれながらに持っている権利』その贈り物をいつまでも大事にしたいものである。
 しかし、沢山の自由を手に入れた一方で、世の中のバランスがどこか崩れ掛けている様にも思える。「虐待」「SNSでのイジメ」「自殺」「草食系男子」「モンスターペアレント」等テレビでよく目にするこの様な言葉に、親となった今、子供達の将来に不安を感じる事がある。親なら誰もが一度は、我が子がイジメに合わないか・・・等考えた事はあるだろう・・・。イジメ一つ取っても時代に伴い多様化してきていて、本当に我が子の変化に気付いてあげられるのだろうかと思う事がある。子供が小さなうちはともかく、思春期の子ともなれば親に心配を掛けたくない、知られたくないと隠す様になるかもしれない。現に私も思春期の頃は親に知られたくない事は、家では普通に装う様にしていた事がある。そんな時、父に言われた言葉、
「お父さんとお母さんは、智子がどんな道に進もうとずっと智子の味方だよ。間違った道に進みそうになったなら、そっと道しるべを差し出すけれど、自分の信じた道を自信を持って歩みなさい。」
 その言葉が大きな愛に包まれている事に気付き、勇気や自信に変わり困難に立ち向かうきっかけにもなった。そして今でもその言葉は私の支えにもなっている。親や大人が子供達にしてあげられる事に、きちんと思いを言葉で伝える事が大事ではないかと思う。いろいろな人がいて、いろいろな考え方がある。必ずしも自分と同じ考えばかりの人達ではない事。自由とはいえ、権利の使い方が自分本位になれば、戦争と同じ様に相手を傷つけてしまう事もある事を。一人の人間として尊重する気持ちを持てる様に私は、子供達に伝えていきたいと思う。
 未来へ羽ばたく子供達へ・・・先人達が築き上げた権利の意味や重さを知り、自分の命を大切に、人を大事にして、明るい社会、戦争のない世界であって欲しいと願わずにはいられない・・・。
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