【優秀賞】 友達

玉井小学校 5年 荒川 慈温
 ぼくは、ようち園のと中に、別な町から転園してきた。知らない場所、知らないようち園、知らない友達、何もかもが不安だった。
 転園することが決まってから毎日、父や母に、 
「友達とさよならしたくない。はなれたくないよ。」 
と言っていた。でも、変えることはできず、ぼくは転園した。
 年少の冬休み、ぼくは、預かり保育から新しい生活をスタートさせた。 
「あらかわじおんです。よろしくお願いします。」 
と、あいさつをした。みんな、じーっとぼくを見つめていた。ぼくは、だれの顔も見れないまま、下を向いていた。遊ぶ時間が始まっても、ぼくは、ずっと一人。本当は、戦いごっこやおにごっこをしたいと思った。 
「仲間に入れて。」
の一言が言えない。ぼくは、お弁当の時間も一言も話さず、ただただ食べた。全然おいしくなかった。そんな日が、三日くらい続いた。ぼくは、ようち園に行きたくないと思い始めていた。 
「おはようございます」
と、いつものように教室に入った。ロッカーにかばんやお弁当をしまっていると、 
「おはよう。じおん君。」
と、声をかけられた。ぼくは手をとめて、声の方をすぐ見た。だれだろう、名前が分からない。ぼくは、あいさつしよう、名前を聞こうと思ったのに、声にはすぐ出せなかった。ぼくはとても緊張していたのだ。その子は、 
「ねえねえ、じおん君はどこから来たの。」 
「ねえねえ、どんな遊びが好き。」 
と、次から次へと質問してきた。ぼくが、何一つ答えられずにいると、その子は、ちょっと悲しそうな顔をして、行ってしまった。
 ぼくは、せっかく声をかけてくれたのに、悪いことをしてしまったと、深く後悔した。家に帰ってからも、その子のことが頭からはなれなかった。どんな気持ちで話しかけてくれたのか。勇気をふりしぼって声をかけてくれたはずなのに、ぼくは、勇気が出なかった。
 次の日、ぼくは、 
「おはよう」
と自分から声をかけた。その子は笑顔で、
「おはよう」
と答えてくれた。本当にうれしかった。ぼくが、一人でいるのが気になって、声をかけてくれたそうだ。
 あれから六年。ぼくと友達は、今も変わらず仲良しだ。友達の勇気ある行動とやさしさのおかげで、ぼくは救われた。 
 ぼくも困っている人がいたら、勇気を出して、声をかけたり、手助けしたりしたいと思った。あの日の友達のように。
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